金銀妖瞳千里眼

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北朝鮮国連代表部ちっぽけ秘録

<北朝鮮国連代表部>
・シン・ソンホ)国連大使
・パク・ドクフン次席大使

(虚々実々虚々の日)
「ちくしょう!」
シンは運転手に聞こえない小声ででつぶやいた。
普段は黙々と臆面にも出さずに事に当たっているが、わずかでも声に出してしまった。
ふと運転手に目をやる。
運転手は黙々淡々と運転している。
こんなこと、もう慣れたと言えば、慣れた。
今さら考えることなどない。
どうせ、これからやることは変わらないのだから。
「手前勝手にやりやがって!いつか・・・いつか・・・」
そう言って、シンは車を降りた。

***

朝、デスクに座ってシンは置いてあるコーヒーをすする。
相変わらず薄いが、それも慣れた。
ふと椅子を回して見まわした個室もお世辞にもキレイとは言えない。
個室の窓からは事務員たちが座りっぱなしで当てもない作業ばかりやっている。
朝早くから詰めていても、どうせ何も実になるものはやってはいないのだが。
連中は先月末も管理会社から家賃の督促を受けているはずだが、報告すらして来なかった。
そんなここが、NYの北朝鮮国連代表部だとは。

パクがノックして部屋に入ってくる。
いつもコーヒーを飲みほしたころに部屋に入ってくる・・・律儀なやつだ。
まあ、形だけの気の使いようなのはバレバレでも、絶対に必要なことなんだが。
「ミサイルの件は聞いていますか大使」
「ああ、もちろんテレビでね」
「本国からの連絡はいまだありません」
「そうか・・・では、連絡はいつもの通り待つとしよう」
「これからの対応はどうします?」
「対応は変わらんよ。米帝と交渉を続ける、それだけじゃないか」
「ここ数日の動きで米帝も相当態度が硬化しています」
「それでも交渉だ。我々が踏ん張っていれば、最後は向こうが落ちるさ。追い込まれているのは米帝の方なのだから」
「かしこまりました。今日も米帝の反応を探ります。では」
パクは静かに部屋を出ていった。
パクの反応は相変わらず淡白だな。
だが代表部の連中はみな同じ反応だ。
わかっていながらよくやっていると思う。

交渉カードなど端からない。
ないものは作りだすしかない、それだけだ。
作りだして交渉に引きずり出す、それが仕事だ。
そう何度も何度も自分に言い聞かせてきた。

事務所の中は相変わらずバタバタやっているらしい。
そうして毎日時間だけが過ぎていく。
事務員がドアをノックした。
アメリカから連絡があったのだろう。
「大使。アメリカから連絡がありました。連絡したいことがあるので、国連本部の1303小会議室へ来るようにとのことです」
「わかった、すぐ行く」
パクとともに車に乗り込み国連本部のビルに行く。
変なバイクが後ろを追いかけてくるが、相変わらず莫迦らしい。

エレベーターから出て、すぐの小部屋。
アメリカ側はもうすでに待っている。
彼らは絶対に先に待っているのだ。
「どうぞ、かけたまえ」
ソンは椅子に腰掛ける。
革椅子のフワフワ感がいつも癪にさわる。
アメリカの国連大使次席補が前置きもなく口を開く。
「今回のミサイル発射は明確な安保理決議違反だ。国連はこれを重大な挑戦と考えるし、アメリカはこの事態を重大に受け止める」
ソンは間髪入れずに反論する。
「我々は自らの自衛権の」
「君の意見は聞いていない。以上だ」
「おかしいではないですか、我が国の主張も聞くべきだ、これは個人ではなく」
「ここは交渉の場ではない。我々は通告した。以上だ」
連中は席を立って、さっさと部屋を出ていった。
結局、いつもの調子で話は終わった。
横にいるパクは一言も発しない。
連中も本気で話す気はなく、我々を相手にすらしない。
本当の交渉は外務省のNY連絡部の連中としているのだから。

帰途、車に乗り込み、じっと目を閉じる。
このまま時間稼ぎだけの手続きを踏むだけなのか。
何か手はないものか・・・連絡部の連中を出し抜く方法は。
そんな莫迦げた考えがどうしても頭をもたげる。
いろいろ手を尽くせるかどうか考えてみるのは習慣で、毎回のことだ。
この倦怠感を見透かしたようなタイミングでやおら携帯電話が鳴った。
「大使に本国から連絡がありました。以上です」
そう連絡員は用件だけ手短に言って電話を切った。
本国から連絡などないのによく言ってくれる。
気を使って連絡を入れただけで、あとは想像して考えてくださいと言うことだ。
「ふっ・・・」
どうせ来もしないアホな本国からの連絡内容などとうに見当はついている。
しかし、国連での交渉が終わってから今頃連絡とは、わが連絡員のセンスを自嘲せずにはおれない。
演じ方はこれまでと変わらないな・・・が・・・しかし・・・

***

否や訳の分からないマスコミに取り囲まれる。
「北朝鮮がミサイル発射をやったようですが、これについてどう思われますか?」
「我が国の当然の権利であり、自衛権の範囲内だ」
「国連決議違反では?」
「・・・」

押し黙ったまま、ソンはいつまでも連絡の来ない代表部事務所へと消えた。
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